講演録『ケネス・タナカの仏教教室Ⅳ』を出版しました。
本書は2020(令和2)年5月から12月にかけて、浅草の浄土真宗・厳念寺主催でインターネット(Zoom)を介して開催された仏教講座・全7回の講義録をまとめたものです。ケネス先生から提案された今年度のテーマは「仏教心理学 ― 縁起的主体性で生きる」でした。「仏教心理学」という新しい領域を提唱するケネス先生が、現代の心理学や心理療法の知見を手がかりにして、仏教理解のために新たな光を当てていただきました。
厳念寺の記念事業として2017(平成29)年から始まった講座は、既に4期目に入りました。今年度も例年どおりに4月から厳念寺を会場にして計画し、約90人の聴講希望者が待っている中で、2月からのコロナウィルス流行の悪化にともない、日本ばかりか世界中を揺るがすような出口が不透明で深刻な事態によって中止せざるを得ない状況に追い込まれました。
ところが、そこでケネス先生から提案がありました。「こんな不安と混乱のある時だからこそ、それにいくらかでも寄与するために、何とか仏教の知恵のエッセンスを縁のある方々に届けたい」という熱い願いを具体化するために「Zoom(ズーム/テレビ電話のように相互に視聴できるシステム)」という、インターネットを利用したオンライン講座にチャレンジしてみることになった次第です。
有り難いことに、遠方の九州地方や福井県・石川県等からも含めて百人近くの老若男女が参加されました。前年までの講義後の楽しい軽食のある懇親会ができなくなったことは寂しいことでしたが、一方で今まで参加が難しかったような遠隔の皆様とつながる機縁ともなりました。パソコンの操作等の試行錯誤で、最初のうちは、どうしてもぎこちないところもありましたが、後半には予想以上に先生も利用者の皆さんも徐々に調子をあげていらしたように思えます。その現れは、他の仏教講座ではなかなかないような講義後の活発な質疑応答にもよく見られるのではないでしょうか。
例年どおり、講義内容を文字化・編集してインターネット上に配信することに加えて、今年度からは講義を録画・編集したものを後日にYouTubeにアップする試みもいたしました。
ケネス先生には、毎回、講義録の原稿を忙しい中で労を厭わずに校正・加筆していただけたことに改めて深謝申し上げます。その総まとめとしての果実が本書となりました。ケネス先生のお話の雰囲気をできるだけ残せるようにしながら編集・校正を試みました。皆様方とご一緒に、ケネス先生の求めた道を訪ねることのできたことを慶んでおります。
ケネス先生のあつい求道心を背景とした人柄と、日本人にはない視点とセンスからクリアに切り込んでくる新鮮な内容がふんだんに表現された、初心者でもよく理解しやすい講義となっております。人生を肯定する、明るく楽しい前向きなケネス流仏教を楽しみながら昧読いただければ幸いです。
令和3(2021)年 正 月 厳念寺 住職 菅原 建 九拝 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
今年のシリーズは「仏教心理学 ― 縁起的主体性で生きる」という総合テーマで進めてきました。何故「仏教心理学」であるかと言えば、それは仏教の真理を理解する手立てとして、少しでも心理学からの叡智を採用することで、現代人の理解と実践がより容易になると確信しているからです。「仏教心理学」という学術分野の成立にはまだ時間がかかると思いますが、私なりにこの講座を通して、その営みを始めることができたことを嬉しく思っています。
次の「縁起的主体性で生きる」という副題中の「縁起」は、仏教の最も基本な教えです。それを理解することは難しいことではありません。すなわち一人一人が、他に縁(よって)起(お)こっている―つまり、他によって生かされているということに全身で感得すれば良いのです。
最後の「主体性で生きる」ということは、仏教が説く真実に気づき・目覚め、生きていく土台にすることです。それによって、以前のように他人の目に振り回されず、以前より確信を持ち、そして以前より幸せな人生が送れるようになるのです。
以上の趣旨に基づいて、未曾有のコロナ・パンデミックという困難の中で講座を中止せず、オンラインにより無事に5月から7回の講座を行うことができました。その内容もこのように文字化され出版することができたことは有り難いことだと思っています。読者の皆さまが、講義録の内容の一点でも自分のものにしていただき、より幸せになるだけでなく、仏教が目指す気づき・目覚めを少しでも体得されることを願っています。
最後になりましたが、この講座は厳念寺の菅原家ご一家の多大なるご尽力の基に成り立っている事を改めて強く感じさせていただいております。毎回のスムーズな講座運営のために坊守と副住職、更に副住職にはズーム(Zoom)運用及び録画撮り、そして住職には難しいテープ起こしから出版までと、皆様の献身的なお気持ちに心から御礼申し上げます。
2020(令和2)年 師 走 東京 府中市にて ケネス 田中
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