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【誰そ彼のことばno.4】ほとけ正月【仏教コラム】

ほとけ正月




ほとけ正月


 日ごろ忙しくしていても、お正月とお盆は故郷に帰り、家族や懐かしい人と過ごす方は多いでしょう。昔も「藪入り」といって年二回、一月十六日と七月十六日の前後だけは、よそで働く奉公人も雇い主から休みをもらい、帰省したものでした。

 ところで、「帰省」するのは生きている人だけではないそうです。お盆と同様、あの世からご先祖たちも帰り、再会をよろこぶ好日であるのがお正月だとされてきました。

 これを「ほとけ正月」といい、年明けて初めて行う仏事供養の意味も込められています。

 今も年越しから一月十五日にかけて、菩提寺やお墓に初参りにいくならいが各地にあり、奄美諸島の徳之島では、一月十六日を先祖祭り、先祖正月といってお墓の前で酒盛りをする慣習があるそうです。


 私たちはお正月とお盆に、お寺やお墓の前で、仏様や先祖と向き合う機会を伝承してきたのですね。では、それは何を意味するのでしょうか。

 厳念寺の宗旨である浄土真宗の宗祖・親鸞聖人(一一七三~一二六二)が著した聖典『教行信証』に、中国の道綽禅師(五六二~六四五)の著書『安楽集』から引用した次の言葉があります。

「前に生まれん者は後を導き、後に生まれん者は前を訪え」(現代語訳:前に生まれた者は後に生きる人を導き、後の世に生きる人は先人の生きた道を問いたずねよ)

 この言葉は真実(悟り)の言葉や教えを収集するその訳をあらわしたものですが、有限の命を生きる私たちは、よく生きようとするなら、前に生まれた者(先人、先祖)に導かれ、そしてまた後に生まれる者(これから生まれる人たち)を導いていく、願いのタスキをかけられた存在であると言い換えることもできるのではないでしょうか。

 ほとけ正月、お寺やお墓の前で、先祖からかけられた「願い」を見つめる機会にもしたいものです。

                      合 掌 



【『誰(た)そ彼(かれ)のことば』とは?】


 日々の生活の中で出遇う誰かのことばを通し、仏教的な視点を交えつつ深め、味わっていこうという新コラムコーナーです。


「誰そ彼」には元々「あなたは誰ですか?」という意味があるといいます。また、その言葉が転じて「黄昏(たそがれ)」という言葉になったと言われています。黄昏時は、「この世」と「あの世」が交わる時であるとも言われますが、仏教において「あの世」は「気づきの世界(彼岸)」という意味を持ちます。彼岸をたずね、此岸(しがん)「自分の世界、生活」の有り様に気付き、試行錯誤しながら歩むことが仏教の実践とも言えます。これから多くの方々との「ことば」と出遇うことを通し、日々の生活の糧としていけるよう、皆さんとご一緒に耳を傾けて参りたいと思います。

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厳念寺

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